【受精】いくつかの方法があります!
みなさん、こんにちは。アートラボ渋谷クリニック院長の太田です。
まもなく梅雨入りしそうな気候が続きますが、いかがお過ごしでしょうか?
前回は採卵についてお話ししましたが、今日は採卵後に行われる【受精】の過程についてお話ししたいと思います。
受精の方法は主に、①媒精と②顕微授精の2つがあります。
以下に概要をご説明します。
❶媒精(ふりかけ)
媒精とは通称「ふりかけ」とも言われ、卵子と精子を培養液中で出会わせて精子の力で受精させる「通常の体外受精」と呼ばれる方法です。
採取した卵子を培養液に置き、洗浄した精子を加え自然に受精が起こるのを待ちます。
一つの卵子あたり10万個程度の精子が必要と言われており、自然に近い形で受精が行われるため通常の精子の数や運動能力が十分な場合に使用されます。
❷顕微授精(ICSI)
一方、顕微授精(以下ICSI)とは専用の極細いガラス管で精子を1つ吸い上げ、卵子内に直接注入する方法です。ICSIは通常の体外受精を行い受精障害となった方、あるいは受精障害が予測される場合に適応となります。高度乏精子症、精子無力症、奇形精子症、不動精子のみの方、精巣から精子を採取した例(精巣内精子採取:Testicular Sperm Extraction, TESE)などがICSIの適応です。
顕微授精のプロセスは以下です。
・卵子の状態
卵子の周りの顆粒膜細胞を剥がし未熟か成熟かの判断を行い、成熟したMⅡ期の卵子のみを受精に用います。
・精子の選別
顕微授精では形のいい元気な精子を選んで受精させることができます。
・精子の不動化
精子のしっぽの一部を損傷させることで、顕微授精をより正確に行うことができます。
卵子を活性化させるのに重要なプロセスで、不動化が不完全な場合、受精や胚の成長が障害される可能性があります。
・精子の注入
1つの精子をガラス管に吸い、卵子の中に直接注入します。
・卵活性化
受精障害のある方には卵子の活性化を起こす処理として、カルシウムイオノフォアという方法を採用しています。イオノマイシンという物質が細胞内のカルシウム濃度を上げ卵子を活性化させる作用を利用し、受精障害を改善する試みを行っております。
当院ではピエゾICSIと呼ばれる卵に負担が少ない方法でICSIを行っております。
❓ピエゾICSIとは❓
従来の方法では、先の尖ったガラス管で卵子の膜を刺し細胞質を吸引しますが、ピエゾICSIは先の尖ってない平らなガラス管で振動により卵子の膜に穴を開けで細胞質を吸引しません。そのためピエゾICSIは卵子へ与えるダメージを軽減でき、本来であれば受精させるのが困難な卵子でも受精率の向上を図れます。当院ではピエゾICSIを全例で追加料金無しで行っていますのでご安心ください。
その他にも、媒精と顕微授精を同時に行う「Split」という方法もあります。
診察の際にまた詳しくはお話しさせていただきますね。
最後に豆知識です。
体外受精と顕微授精で「受」と「授」の字が異なることにお気づきでしょうか?
- 「受」:「受ける」という意味があり、自然に受精が起こることを示します。精子と卵子が自然に結合す過程を指します。
- 「授」:「授ける」という意味があり、精子を卵子に直接注入するという行為を示します。顕微授精のように治療により精子を卵子に授けることを意味します。