【培養】基本プロセスのご紹介。Veeck分類ってなに??

みなさん、こんにちは。アートラボ渋谷クリニック院長の太田です。

酷暑が続きますが、体調を崩されてはいませんか?

今日は、体外受精のプロセスに戻り、【胚の培養】についてお伝えしようと思います。

胚培養は、受精卵が分裂し、最終的に胚盤胞と呼ばれる胚へと成長するプロセスであり、妊娠率を左右するため細心の注意を払う必要があります。

胚は発育に必要な栄養分や成分が含まれた専用の培養液に入れられ培養器の中で育てられます。培養器は子宮・卵管内に近い温度、酸素・窒素・CO2ガス濃度に調整して厳重に管理されており、異常があれば直ちに警報が鳴るようなシステムになっています。

また、培養室内はクリーンルームの仕様となっており温度と湿度管理、更に培養室内の光も胚に影響するためなるべく光を当てないように調光式となっています。

【胚培養の基本プロセス】

❶受精後1日目:『前核期胚』

卵子と精子が結合した後、翌日に受精の有無を確認します。
正常に受精した卵子は、母親(卵子)由来と父親(精子)由来の2つの前核(父親と母親からの遺伝子を持つ構造)を持つ前核期胚となります

❷受精後2日目・3日目:『4細胞胚』『8細胞胚』

受精から約48時間後、胚は2細胞から4細胞に分裂します。
さらに24時間後には8細胞程度に達します。この段階での分裂の速度や細胞の質は、後の発育に重要な影響を与えます。

❸受精後4日目:『桑実杯』

胚は桑実胚と呼ばれる多細胞構造になります。この段階では、細胞が互いに密接に接触し、将来の胎児の発育に必要な基盤を形成します。

❹受精後5日目・6日目:胚盤胞

胚は胚盤胞と呼ばれる状態に成長します。この段階では、胚は内細胞塊(将来の胎児になる部分)と栄養外胚葉(胎盤になる部分)を持ちます。

これらの培養の過程では、胚の質を評価し、移植に適した胚を選別していきます。
この評価は、胚の分裂速度、細胞数、均一性、フラグメンテーション(細胞の断片化の程度)などを基準に行われます。

  • 分裂速度:胚の分裂が適切な速度で進んでいるかどうかは、胚の健康状態を示す重要な指標で、分裂が遅い胚は、発育に問題がある可能性があります。
  • 細胞数と均一性:分裂した細胞の数や形が均一であるかどうかも評価されます。
  • フラグメンテーション:胚の分裂過程で細胞が断片化している状態を指します。断片化の程度が少ないことが望ましく、断片化が多いと、胚の発育に問題が生じる可能性があります。

また、さらに3日目までの初期胚と呼ばれる段階においては、「Veeck分類」と言われるグレード評価を用います。

Veeck分類


Veeck分類は、以下のように細胞の数と質に基づいて胚を評価します。

  • グレード1:非常に優れた質の胚。均一な細胞でフラグメンテーションが全くないか、ごくわずかです。
  • グレード2:良好な質の胚。細胞の均一性が高く、フラグメンテーションが10%未満です。
  • グレード3:中等度の質の胚。細胞の均一性が一部欠け、フラグメンテーションが10-25%の範囲にあります。
  • グレード4:質がやや低い胚。細胞の均一性がさらに低く、フラグメンテーションが25-50%です。
  • グレード5:質が低い胚。フラグメンテーションが50%以上で、細胞の均一性も低いです。

より高いグレードの胚は、移植後の妊娠率が高いとされており、あくまで形態・見た目をもとに判断しますが、世界的に実績のある評価法です。

このように、培養はクリーンなラボの中で適切な環境で胚を培養し、慎重に評価・選別、またVeeck分類のような評価基準を用いることで、胚の質を客観的に判断し、最適な胚を選択していきます。当院はラボの面積が大きく、適切な管理のもと運用していますので安心してお任せいただければと思います。

次回は、皆様からよくご質問がある【胚盤胞のグレード】についてお話ししようと思っています。

当院の料金表はこちらになります。

感想やご質問などありましたら、

SNSやお問い合わせページからぜひお気軽にご連絡いただけたら嬉しいです。

では、また次回お会いしましょう!

アートラボ渋谷クリニック院長 太田岳晴