タイミング法
妊娠率を高めるためには、排卵期、特に排卵の3日前~排卵前日に性交渉を行うことが重要です。そこで超音波検査で卵胞の発育を見て、状況によって尿検査や血液検査で卵胞ホルモン(エストロゲン:E2)や黄体化ホルモン(luteinizing hormone:LH)の分泌量の変化を調べることで正確な排卵日を予測します。排卵期にタイミングを合わせて性交渉を行うことで、自然妊娠の確率を高めます。
月経が28日周期で順調な方の場合、排卵日は月経14日目前後です。しかし月経周期は毎月数日間、前後することが多く、これは排卵日が前後しているためです。ご自身で月経は順調と思われている方でも毎月、排卵日は数日間の間でずれています。排卵日予測アプリは当てになりません。自身でタイミングを取るよりクリニックで排卵日を正確に予測することが重要です。当院では院内で血液検査を行いホルモン値を測定することで排卵日を約30分で早くより正確に予測できます。
自然の排卵がみられない場合、排卵誘発剤を併用する場合もあります。最初は飲み薬の排卵誘発剤を使用し、それでも卵胞の発育が見られないときは注射薬を用いる場合もあります。排卵誘発剤の副作用として、多数の卵子が排卵され受精した場合、多胎妊娠の可能性が高まります。数回のタイミング法で妊娠が見られない場合は、人工授精へのステップアップを考えましょう。
人工授精(IUI:Intrauterine insemination)
人工授精は子宮内精子注入法とも呼ばれます。射精した時に精液中に数千万~数億ある精子も、膣→子宮頸管→子宮内→卵管と進むにつれて次第に数が減少します。受精の場である卵管で卵子と出会う精子は最終的に数百と言われています。人工授精では、子宮内腔に精子を注入することで、排卵後、卵管に到達した卵子と出会う精子の数を増やし、妊娠の確率を高めます。
子宮内に注入された以降は通常の自然の妊娠と同じ経路をたどるので、「人工授精」という呼び方ですが自然の妊娠とまったく変わりません。射精された精液中には精子以外に細菌やプロスタグランディン(子宮を収縮させる痛みの原因物質)などの物質が含まれ、精液そのものを注入することは細菌感染や下腹痛などの原因となります。
そのため精液を洗浄し運動性の高いものを集め精液中から運動精子だけを分離濃縮する必要があります。濃縮した精子を専用の細いチューブで子宮内に注入するので性交や射精、頸管粘液に問題があるカップルにも適した方法と言えます。
妊娠率はタイミング療法の場合、1回あたり約3-5%、人工授精の場合は約5-10%となります。ただし、卵管閉塞や卵管通過障害、重度の精液検査の異常がある場合は体外受精を選択するのが良いでしょう。また人工授精を3~5回行っても妊娠に至らない場合は、体外受精へステップアップを考える必要があります。
適応
- 精子が少ない、または運動率が低いため、自然の性交では受精に必要な数の精子が卵管に達しないと考えられる場合
- 精子は正常でも、頸管粘液の分泌不良で十分な精子が子宮に入らない場合
- 膣内射精できない場合
- 性交ができない場合
- 凍結精子を用いる場合(多忙や長期出張など)
- タイミング治療にて妊娠に至らない場合
人工授精の流れ
- 月経9~13日目頃:超音波検査、ホルモン検査(血液・尿)で排卵日を予測
- 人工授精を行う前々日か前日:人工受精の24~48時間前に排卵を促すための注射か点鼻薬
- 人工授精当日:精液は自宅で採取した場合、4時間以内に持参するか院内で採精
精子の調整に1時間ぐらいかかります。精子提出後、一旦外出される際はスタッフにお声掛けください。
人工授精施行後、安静は不要です。感染予防に抗生物質を内服して頂きます。
人工授精当日の精液の提出時間・提出方法(持参か院内採精)と人工授精の施行時間をスタッフとご確認ください。
採精室をご利用の場合は清掃料¥1,000をご請求申し上げます。
人工授精当日までに同意書に夫婦双方の署名が必要となります。